ペットと一緒にできる災害対策
【ペットと生き延びる】もう後悔しない!今日から始める災害対策
災害時におけるペットの存在は、単なる飼育動物ではなく、多くの家庭にとってかけがえのない家族の一員である。
しかし、地震や風水害といった大規模災害が発生した際、人と同様にペットもまた、二次被害、逸走、精神的ストレスといった深刻なリスクに直面しています。ペットの安全を確保することは、飼い主自身の生命を守ることと密接に関連しており、災害への備えは、人とペットが共に生き延びるための不可欠な課題となっています。
もしも、あなたが家で愛するペットとくつろいでいる時に、突然、激しい揺れが襲ってきたらどうしますか? 部屋中に家具が倒れ、ガラスが飛び散る中、パニックになったペットはどこへ逃げればいいのでしょうか?
東日本大震災や熊本地震、そして毎年のように日本を襲う風水害。私たちは「いつか」ではなく、「いつ起きてもおかしくない」災害の時代に生きています。多くの飼い主が災害時にペットと一緒に避難することを「同行避難」と認識していますが、これは避難所に「連れて行くこと」にすぎません 。避難所での共同生活では、アレルギーや鳴き声、衛生面の問題から、人とペットの居住スペースは原則として分離されるのが一般的です 。
この厳しい現実を知った上で、あなたは愛する家族の命を守る自信がありますか?
「いつか備えよう」「なんとかなるだろう」という漠然とした考えは、いざという時、後悔となってあなたを襲うかもしれません。ペットの命を守ることは、飼い主であるあなたの最も重要な責任です。そして、その命を守る行動は、今日、この瞬間から始めることができます。
本記事では、災害時に後悔しないために「今すぐできること」を、具体的なステップに分けてお伝えします。
1. 命を守るための空間づくり
・ 自宅の安全確保:人とペットの命を守るための基盤
災害時において、飼い主自身とペットの命を守るための最も基本的な行動は、自宅の安全を確保することである。
特に地震で最も多い負傷の原因は、家具の転倒や落下です。その割合はなんと3割から5割にものぼると言われています 。これは人間だけでなく、ペットにとっても命に関わる深刻なリスクです。ペットが普段過ごす場所、例えばケージやサークルが倒れたり、その近くに物が落ちてきたりしたら、逃げ場がなくなってしまいます。
まずは、自宅の安全確保から始めましょう。
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家具は壁にガッチリ固定! 大型家具にはL字金具や突っ張り棒を使って、壁に固定してください 。賃貸で壁に穴を開けられない場合は、転倒防止用の突っ張り棒やキャスター付き家具のロック機能など、できる限りの対策を 。
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ペットの居場所は「安全地帯」に! ペットのケージやベッドは、転倒の可能性がある家具や、割れる危険がある窓ガラスの近くを避けて設置しましょう 。高所に置いてある鳥かごも、しっかりと固定が必要です 。
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ガラスの飛散を防げ! 食器棚の扉には耐震ラッチやストッパーを取り付け、ガラスには飛散防止フィルムを貼るなど、二次被害を防ぐ対策も忘れずに 。
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屋外もチェック! 外で飼育している場合は、犬小屋をブロック塀や倒壊しやすい建物の近くに置かないようにしましょう 。
これらの対策は、単に物の配置を変えるだけでなく、ペットの命を守るための基盤を築く行動なのである。
2.「命の備蓄」を始めよう!最低5日分、できれば7日分以上!
災害発生後、救援物資が届くまでには時間がかかることが予想されるため、飼い主による事前の備蓄が非常に重要となる。あなたは愛するペットのために、最低何日分の備蓄を用意していますか? 環境省のガイドラインでは「少なくとも5日分、できれば7日分以上」の備蓄を推奨しています 。
あなたの備蓄は足りてる?チェックリスト
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水とフード: ペット用の水は、人間用とは別に確保が必要です。体重1kgあたり1日100mlが目安です 。例えば、体重5kgの犬と3kgの猫がいる場合、7日分の水は犬で3.5リットル、猫で2.1リットル必要になります 。フードは、保存しやすいドライフードがおすすめです 。療法食が必要な場合は、1ヶ月分程度多めに備蓄しておきましょう 。
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ローリングストック法: 「古いものから使って、使った分だけ買い足す」というこの方法なら、常に新鮮な備蓄を保てます 。災害時にも、ペットが普段から慣れているフードやトイレ用品を使うことができ、ストレスを軽減する効果も期待できます 。
フードについては、ドライフードは賞味期限が長く、保存が容易であるため備蓄に適している 。療法食や特別なフードが必要なペットの場合は、通常分に加え1ヶ月分程度の多めな備蓄を確保することが推奨される 。また、ストレスや食欲不振に備え、ウェットタイプのフードや、複数の種類のフードを準備しておくことも有効である 。
命を守る「非常持出品」リスト
災害時にすぐに持ち出せるよう、非常用持ち出し袋を準備しておきましょう。
持ち出すべき非常持出品は、優先順位をつけて整理しておくことが、パニック状態でも迅速な行動を可能にする上で不可欠である。以下に、命や健康に関わる品、情報、そして日用品を優先順位別に分類したリストです。
優先順位 | 項目 | 詳細 |
優先順位1 (命・健康) | 療法食、薬 |
投薬が必要なペットの場合、かかりつけの獣医師と相談し、多めに備蓄しておくことが必須 。 |
フード、水 |
少なくとも5日分、推奨は7日分以上 。 |
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予備の首輪、リード |
伸縮しないタイプで、噛みちぎられない強度のものが望ましい 。 |
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キャリーバッグ、ケージ |
避難時の移動や避難所での生活に不可欠 。 |
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洗濯ネット |
猫の保護や移動、応急処置の際に非常に有用 。 |
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食器、ガムテープ |
フードや水を給与する食器と、ケージの補修や情報掲示など多用途に使えるガムテープは必須 。 |
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優先順位2 (情報) | 飼い主・ペットの情報 |
飼い主の連絡先、ペットの写真、ワクチン接種歴、既往症などをまとめたもの 。 |
優先順位3 (日用品) | トイレ用品 |
ペットシーツ、猫砂(使い慣れたもの)、排泄物処理用のビニール袋など 。 |
その他 |
タオル、ブラシ、ウェットティッシュ(アルコールなし)、お気に入りのおもちゃ、懐中電灯、モバイルバッテリーなど 。 |
3. 今すぐできる「行動」の準備!
いざという時、スムーズに行動できるかどうかは、物資の準備だけでなく、ペットの心と体の準備にかかっています。
・ キャリーバッグは「安心できる場所」に!
避難所では、キャリーバッグやケージに入ることができないと、入室を断られる場合があります 。また、避難生活のほとんどをケージ内で過ごすことになるため、ここがペットにとって「安心できる場所」でなければなりません 。
・心の準備:クレート・キャリーバッグに慣らす訓練
クレートやキャリーバッグに慣れていないと、避難所に入ることができない場合がある 。さらに重要なのは、避難生活の大部分をクレート内で過ごすことになるため、ここがペットにとって「安心できる場所」でなければならないという点である。クレートを嫌がるペットにとって、慣れない環境で閉じ込められることは、極度のストレスとなり、体調不良や問題行動につながりかねない 。
クレート慣らしは、「怖い場所」ではなく、「自分から入りたくなる場所」に変えていくプロセスである 。訓練は無理なく、ペットのペースに合わせて段階的に進めることが重要である。
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ステップ1: まずはクレートをリビングなどの生活空間に扉を開けた状態で置き、日常の景色の一部として見慣れさせる 。
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ステップ2: 次に、クレートの中に普段使っている毛布やタオル、お気に入りのおもちゃを入れて、安心できる空間であることを教えてあげる 。
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ステップ3: 食事やおやつをクレートの中で与えることで、「クレート=いいことがある場所」というポジティブな経験を積み重ねる 。
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ステップ4: 慣れてきたら、扉を数秒間だけ静かに閉める練習を始め、食べ終わる前に開ける 。これにより、「閉じ込められる場所ではない」と理解させることができる。
これらの訓練において、クレートを罰として使用することは絶対に避けるべきである。クレート慣らしは、災害時だけでなく、動物病院への通院やペットホテルへの預け入れなど、様々な場面で役立つ重要なスキルとなる 。
・健康の準備:ワクチン接種と迷子対策
避難所は多くの人や動物が密集する場所であり、感染症のリスクが高まる。集団生活を円滑に送るため、そしてペット自身の健康を守るために、狂犬病予防接種(犬の場合)はもちろん、各種ワクチン接種やノミ・ダニなどの寄生虫駆除を事前に済ませておくことが、衛生管理の必須条件となる 。

迷子対策は「二重、三重」で!
災害時のパニックでペットが逃げ出してしまう可能性は非常に高いです 。首輪に迷子札をつけるだけでなく、マイクロチップを装着する。
二重、三重の対策が、再会できる可能性を格段に高めます 。
ペット情報手帳を作成する!
災害発生時、また避難生活において、ペットの情報を迅速に提示できることは、命を救う上で極めて重要です。ペットと一緒に写った写真も用意しておくと、飼い主であることを証明する際に役立ちます 。
4. 避難生活を乗り越えるための知恵と配慮
・避難所におけるペット飼養の現実とルール
避難所でのペットの飼育は、多くの人々が共同生活を送る特殊な環境下で行われるため、特別な配慮とルール遵守が求められる 。避難所には動物が苦手な人や動物アレルギーを持つ人もいるため、人とペットの居住スペースは原則として分離される 。吹田市などの事例では、倉庫、下足室、屋根のある渡り廊下、自転車置き場などが、ペットの一時飼育場所として想定されている 。これらの場所は、鳴き声や臭いが原因でトラブルが発生しないよう、一般の避難者スペースから離れており、清掃がしやすい場所が選定される 。
避難所での生活を円滑に進めるため、飼い主は以下の基本ルールとマナーを遵守する責任がある 。
避難所での基本ルールとマナー飼い主の責任
餌やり、水やり、糞尿の始末、衛生管理など、ペットの世話はすべて飼い主の責任で行う 。
衛生管理:
飼育場所の清掃、特に排泄物処理を徹底する 。水で流した後に消毒薬で拭き取るなどの具体的な対応も必要となる 。
マナー:
鳴き声や臭い、毛の飛散に配慮し、他の避難者に迷惑をかけないように努める 。犬の散歩はリードを短く持ち、指定された場所で行う 。
トラブル対応:
ペットに関するトラブルが発生した場合は、まずは飼い主同士で話し合い、解決に努めることが求められる 。
5.ペットの心身のケア:ストレス軽減と健康維持
避難所という慣れない環境は、ペットにとって極めて大きなストレス要因となる。騒音、見慣れない人々や動物との接触、行動の制限などにより、ペットは強いストレスを感じる 。このストレスは、嘔吐や下痢、食欲不振、免疫力の低下、さらには攻撃的になるなどの異常行動を引き起こす可能性がある 。
飼い主は、ペットの異変を早期に察知し、適切なケアを行うことが求められる。以下に、避難生活で現れやすいストレスサインと、それに対する具体的なケア方法を提示する。
ストレスサイン | 具体的なケア方法 |
過剰な吠え・鳴き、攻撃的行動 |
飼い主がそばに寄り添い、安心感を与える 。クレートにタオルなどをかけて目隠しをし、外界からの刺激を遮断する 。 |
嘔吐・下痢、食欲不振 |
精神的なショックが原因であることが多いため、まずは飼い主が寄り添い、落ち着かせる 。水分補給を促すよう注意を払い、症状が続く場合は獣医師に相談する 。 |
震え、隠れる |
使い慣れた毛布やおもちゃ、飼い主の匂いがついたタオルなどを与え、安心できる居場所を作る 。 |
活動性の低下 |
可能であればいつもより多めにお散歩をしたり、おやつや遊びで安心感を与える 。 |
6. 犬、猫、小動物ごとの特性を考慮した対策
・犬のための災害対策
犬の災害対策では、基本的なしつけと社会性が特に重要となる 。避難所での共同生活では、「待て」「おいで」「お座り」といった基本的な指示に従うことが、他の避難者とのトラブルを防ぐ上で不可欠である 。また、子犬の頃から多くの人や他の動物に慣れさせておくことで、人に友好的な犬は、飼い主とはぐれた際にも保護されやすくなり、元の飼い主の元に戻る可能性が高まる 。
大型犬の場合、クレートに入ることが難しい場合がある。その際は、避難所において、リードで係留することが想定される 。係留場所は他のペットと接触しないよう十分な距離を確保し、可能であれば柵などで仕切りを設ける配慮が必要となる 。
・猫のための災害対策
猫の災害対策で最も重要なのは、普段から室内で飼育することである 。放し飼いにされた猫は、災害時にパニックとなって行方不明になる可能性が非常に高いためである。
また、猫は犬以上に環境の変化に敏感であり、パニックに陥りやすい。避難時には、洗濯ネットに入れることで落ち着かせることができ、移動や応急処置をスムーズに行うことができる 。また、避難所生活でのストレスを軽減するため、普段から使い慣れた猫砂を用意しておくことが重要である 。災害時の持ち運びを考慮し、軽量タイプの猫砂に慣れさせておくことも推奨される 。
・小動物のための災害対策
ウサギ、ハムスター、鳥などの小動物は、避難時のストレス対策が特に重要である。普段使用しているケージをそのままキャリーバッグとして活用できる場合が多く、これにより慣れない環境でのストレスを最小限に抑えることができる 。
避難所での音や光といった視覚的な刺激は、小動物にとって大きなストレス要因となる。ケージを布で覆い、外界からの刺激を遮断することが有効である 。また、備蓄品としては、普段食べているペレット、チモシー、床材などをローリングストック法で準備しておく 。冬場の災害時には、使い捨てカイロや湯を入れたペットボトルでケージ内の温度を調節するなど、温度管理にも十分な注意を払う必要がある 。
地域との「共助」ネットワークを築こう!
災害時のペットの安全は、基本的に飼い主自身の「自助」にかかっています 。しかし、個人でできることには限界があります。普段から近隣住民やペット仲間とのネットワークを築き、いざという時に助け合える「共助」の関係を構築しておくことが、ペットの命を救う鍵になります 。
災害は「いつか」ではなく「いま」から始まる!
災害は、私たちが想像するよりもずっと多くの苦難を、大切な家族であるペットにもたらします。ストレスからくる体調不良 、慣れない避難所での生活、そして飼い主と離れてしまうかもしれない恐怖...。
本記事が、あなたの心に「今すぐ動こう!」という火を灯すきっかけとなることを願っています。今日から始める小さな一歩が、愛する家族の命、そしてあなたの未来を守る大きな力となるのです。
さあ、あなたのペットのために、今日、何から始めますか?