2025.11.08

愛犬のしつけは“家族の絆づくり”――わが子のように育てる幸せな暮らし方

犬のしつけは“叱ること”ではなく“愛を伝えること”。アイコンタクト、トイレ、散歩、社会化まで、家族の一員として育てるしつけの基本をやさしく解説します。

愛犬のしつけは「わが子のように」育てることから

犬のしつけは、愛犬が社会で安全に、そして飼い主さんと幸せに暮らしていくために欠かせません。
ペットは「家族の一員」。だからこそ、わが子を育てるように、愛情を込めて接してあげましょう。

しつけとは“ルールを教えること”ではなく、“愛犬が安心して人と暮らせる力を育てること”。「ペットに分かりやすく伝えること」がポイントです。動物にも性格や理解のスピードがあり、焦らず少しずつ習慣づけていくことが信頼関係を深める近道になります。
飼い始めたばかりの頃は、まず新しい環境に慣れさせてあげることを第一に。
自分から寄ってきたときには優しくなでて「大丈夫だよ」と伝えましょう。
特に子犬は母犬と離れて寂しがることも多いので、夜泣きが続く間はできるだけそばにいてあげると安心です。


👀 「アイコンタクト」で生まれる信頼とコミュニケーション

しつけの基本となるのが「アイコンタクト(目を合わせる)」です。これは、ペットが飼い主の顔を見ることで「次に何をしたらいいか」を理解できるようになる大切なサイン。アイコンタクトが取れるようになると、外出時やしつけの場面でも飼い主の指示が伝わりやすくなり、無駄吠えや飛びつきなどの行動も減っていきます。
練習はシンプルです。ペットの名前を呼び、目が合った瞬間に「いい子!」と褒めておやつを与えましょう。これを繰り返すうちに、自然と目を合わせる習慣がつきます。
ポイントは、叱るときに目をじっと見つめないこと。叱るタイミングで目を合わせると「見つめられる=怒られる」と誤解してしまう場合があります。あくまで、アイコンタクトは“安心の合図”として使うことが大切です。
毎日の遊びやごはん前など、日常の中で楽しく取り入れることで、信頼関係をより深めることができます。

 


🐶 トイレ・食事・お留守番、日常生活のルールを身につけよう

新しくペットを迎えたら、まず覚えてほしいのがトイレの習慣です。清潔な環境を保つためだけでなく、ペット自身が安心して生活するためにも欠かせません。しつけは「叱る」より「褒める」を基本に進めましょう。トイレを成功させるたびに笑顔で声をかけたり、おやつを与えたりすることで、「ここで排泄するといいことがある」と学習していきます。反対に、失敗しても怒らず、静かに片づけるのがポイント。怒られることで隠れて排泄するようになるケースもあるため、焦らず繰り返し教えてあげましょう。

・ 成功のコツはタイミングと環境づくり

トイレのしつけで最も大切なのは「タイミングを逃さないこと」です。起床後、食事のあと、遊びのあと、寝る前は排泄のチャンス。このタイミングでペットをトイレの場所へ連れていき、上手にできたらすぐ褒めましょう。成功体験を重ねることで、自然と覚えていきます。トイレの場所は静かで落ち着ける場所を選び、常に同じ位置を保つことが重要です。トイレシートをこまめに取り替えて清潔に保つことで、嫌な臭いを防ぎ、失敗を減らすことができます。ニオイ残りにはペット用の消臭スプレーもおすすめです。

・ 失敗した時の対処法と根気よく続けるコツ

トイレを失敗したときに大きな声で叱るのはNGです。叱ると「排泄すること自体が悪い」と誤解してしまい、隠れてしてしまう原因になります。まずは冷静に片づけ、床やカーペットに残ったニオイは専用の消臭剤でしっかり拭き取ります。ニオイが残ると「ここがトイレ」と勘違いして繰り返してしまうため注意しましょう。また、成功率が上がるまでは広い範囲にトイレシートを敷き、成功した箇所を褒めるようにします。徐々に範囲を狭めていくことで、自然と定位置での排泄が習慣づいていきます。

・しつけを助ける便利グッズとリラックス環境づくり

トイレのしつけをスムーズに進めるには、グッズの活用も効果的です。吸収力の高いトイレシート、しつけ用スプレーなどを上手に使いましょう。また、リラックスできる環境づくりも重要です。ペットが安心して過ごせるケージや、落ち着く香りのデオドラントスプレーを活用することで、ストレスを軽減できます。さらに、腸内環境を整えるサプリメントを取り入れると、排泄リズムが安定し、しつけの成功率もアップします。毎日のケアと褒める習慣で、清潔で快適な暮らしを目指しましょう。

 

🍽食事としつけの関係 ― 正しい食習慣が心と体を整える

食事の時間は、愛犬が「飼い主さんを信頼する」大切な瞬間です。
「おすわり」「まて」の指示を守れたらご飯を与える――この繰り返しが愛犬に安心を与えます。
食事中に取り上げたり、テーブルから人間の食べ物を与えるのはNGです。信頼を損ねたり、健康を害する原因になります。

食事は、ペットの健康を支えるだけでなく「しつけの基礎」としてもとても重要です。毎日決まった時間・場所で食事を与えることで、生活リズムが整い、心が安定しやすくなります。特に子犬の時期は環境の変化に敏感なので、食事のタイミングや環境を一定にすることが信頼関係づくりにもつながります。
また、食事中に人の手を入れても怒らないように慣らす「食事トレーニング」も有効です。最初は手でおやつをあげたり、食器の近くで声をかけたりして、飼い主が食事に関わることを“安心”と感じさせましょう。これにより、食事への執着や威嚇行動の予防にもつながります。
さらに、しつけのご褒美として使うおやつも大切な要素です。カロリーを取りすぎないように1日の食事量に含めて調整し、天然素材のおやつや低脂肪タイプを選ぶと安心です。
食事の時間は、単なる「栄養補給」ではなく、ペットとの信頼を深めるコミュニケーションの時間でもあります。



歯磨きのしつけ ― 未来の健康を守る“毎日の習慣”

人間と同じように、犬や猫にとっても歯磨きは欠かせない健康習慣です。特に犬の場合、年齢を重ねるごとに歯周病のリスクが高まり、歯の痛みや炎症が原因で食欲不振、さらには心臓や腎臓など全身の病気に影響することもあります。そのため、歯磨きは「しつけ」として、できるだけ子犬・子猫の頃から慣らしておくことが理想です。
最初は歯ブラシを使わず、指で軽く口に触れることからスタート。少しずつ口を開ける、歯を見せる、といったステップを重ね、徐々に歯磨きシートやペット用歯ブラシに移行します。無理に磨こうとせず、終わった後に褒める・ご褒美をあげるなど、ポジティブな経験として定着させることがポイントです。
特に小型犬は乳歯が抜けにくいことがあるため、歯磨きの際に歯の状態をよく観察し、異常があれば早めに動物病院へ相談しましょう。
“歯磨き=スキンシップの時間”と考えることで、ペットも飼い主も楽しく続けられる習慣になります。

 

🐾 吠えと社会化のしつけ ― 人や犬との上手なコミュニケーションを育てよう

犬にとって“吠える”ことは大切な意思表示のひとつ。嬉しいとき、不安なとき、警戒するときなど、理由があって声を出しています。
しかし、住宅環境では長く吠えたり夜中に鳴いたりすると、近隣トラブルに発展することもあります。大切なのは“叱る”ことではなく、“なぜ吠えているのか”を見極めてあげること。吠えやんだ瞬間に褒めて安心させるなど、行動を通して「静かにしているといいことがある」と学ばせましょう。

また、こうしたしつけの基礎となるのが「社会化」です。
社会化とは、他の犬や人、音や環境に慣れる力を養うこと。特に生後3ヵ月までの子犬期は、さまざまな刺激に順応しやすい“黄金期”です。この時期に外の世界を楽しく経験させておくと、将来的に吠えやすい・怖がりな性格になりにくくなります。

公園やドッグランで他の犬と遊ばせる、人や子どもと触れ合う、車の音や掃除機など生活音に慣れさせる、動物病院やトリミングサロンに連れて行く──。こうした小さな経験の積み重ねが、フレンドリーで落ち着いた犬を育てます。
飼い主の声や表情を通じて“安心”を伝えることが、社会化の第一歩です。

 

 

 🏠 ハウスのしつけで「安心できる自分の場所」をつくる

ハウス(サークルやケージ)は、愛犬にとっての“安心できる自分だけのスペース”です。
まずは、快適に過ごせるサイズのハウスを用意しましょう。成犬になっても方向転換ができる広さが理想ですが、あまり広すぎると寝床と認識されず、トイレをしてしまうこともあるので注意が必要です。
少しずつハウスに慣れさせることで、留守番や災害時にも落ち着いて過ごせるようになります。

次に、ワンちゃんをハウスに誘導します。お気に入りのおもちゃやおやつ、飼い主さんの匂いがついたタオルなどを入れて、「ハウス=良いことがある場所」と感じさせましょう。自ら入るようになったら、少しずつ扉を閉めて慣らしていきます。その際、飼い主さんが近くにいることで“閉じ込められた”という不安を与えずに済みます。

慣れてきたら、飼い主さんが少し離れる練習も。ハウスは「自由に落ち着ける場所」だと認識させることが目標です。最初のうちは吠えても反応せず、静かにできたタイミングで褒めてあげましょう。静かに過ごすことが良いことだと学びます。

最終的に、ハウスで落ち着いて過ごせるようになれば、留守番や来客時も安心です。留守番の前にはしっかり遊ばせ、エネルギーを発散させることも忘れずに。ハウスは“安心の拠点”として、ワンちゃんの心と体の健康を支えてくれます。

 

🚶 散歩のしつけ ― 安全に楽しく歩くための“横について歩く”習慣

お散歩はワンちゃんにとって楽しみであると同時に、飼い主さんとの絆を深める大切な時間です。しかし、ワンちゃんを好き勝手に歩かせてしまうと、飛び出し・障害物・他の人や犬との接触など、予期せぬトラブルにつながる危険があります。だからこそ「飼い主さんの歩くスピードに合わせて、隣を歩く」習慣が重要です。飼い主さんが止まったらワンちゃんも止まる。このシンプルな動作ができると、ワンちゃんが先導する立場ではなく、共に歩く安心の関係を築けます。

しつけの基本は「おやつを使った誘導」。片手に短めに持ったリード、もう片方の手におやつを持ち、進みたい方向へとワンちゃんを導きます。おやつを見せながらアイコンタクトをとって歩き、上手に横を歩けたらすぐに褒めておやつを与えましょう。これを繰り返すことで、ワンちゃんは飼い主さんの動きに自然と合わせるようになります。

お散歩のしつけは室内から始めるのも有効です。廊下やリビングで短い時間「隣を歩く」練習をし、安心して歩ける感覚を育ててから外に出ると、環境の変化にもスムーズに対応できます。
このように「安心して飼い主さんのペースで歩ける」クセをつけることで、散歩中のストレスもトラブルもぐっと減ります。毎日の散歩を、ワンちゃんとの信頼を育む楽しい時間に変えていきましょう。

 


🦴 噛んでよいもの・悪いものを覚えさせる ― 甘噛み対策と正しい学習法

子犬のしつけで多くの飼い主さんが悩むのが「甘噛み」です。遊んでいる最中に軽く手を噛まれるとかわいく感じるかもしれませんが、そのまま放置すると力加減を覚えず、成犬になってから本気で噛む癖につながることもあります。甘噛みをされたら「痛い!」と少し大きめの声で反応し、すぐに遊びを中断しましょう。これを繰り返すことで「強く噛むと楽しい時間が終わる」と学習し、自然と加減を覚えていきます。

また、子犬は成長期に歯のむずがゆさを感じたり、好奇心から噛むことで周囲の世界を学んだりします。そのため、「噛むこと自体」を禁止するのではなく、「噛んでよいもの」と「噛んではいけないもの」を区別して教えることが大切です。人の手や服を噛ませないようにし、代わりに犬専用の噛み応えのあるおもちゃを与えましょう。

さらに、子犬の前で手をひらひらさせたり、獲物のような動きを見せると、手をおもちゃと勘違いして噛みつく原因になります。遊ぶときは必ずおもちゃを介して遊ぶのが鉄則です。

噛み癖が強い場合は、運動不足やストレスが関係していることもあります。散歩や遊びの時間をしっかり取り、噛みたい欲求とエネルギーを十分に発散させましょう。噛んで良いものを与えながら、正しい遊び方を根気強く教えることで、健全な習慣が身につきます。


🐾 愛犬のしつけでやってはいけないこと ― 信頼関係を守るために大切なこと

愛犬との暮らしをより良くするために、しつけは欠かせません。しかし、間違った方法でしつけをしてしまうと、愛犬にストレスを与えたり、飼い主さんとの信頼関係を壊してしまうことがあります。ここでは、しつけで避けるべき代表的な3つのポイントを紹介します。

① 怒鳴る・叩くなどの体罰を与えること

愛犬が失敗したときに大きな声で怒鳴ったり、叩いたりすることは絶対に避けましょう。犬は人間のように「なぜ怒られているのか」を理解できず、ただ恐怖や不安を感じてしまいます。その結果、飼い主さんを怖がるようになり、しつけどころか信頼関係の崩壊につながります。叱るのではなく、「できたときに褒める」ことを意識し、ポジティブな体験を積み重ねていくことが大切です。

② 口輪を長時間つけっぱなしにすること

噛み癖や無駄吠え対策として口輪を使うことがありますが、長時間の装着はNGです。犬は口で呼吸や体温調節を行うため、長時間の着用はストレスや健康リスクを伴います。トレーニングの一時的な使用にとどめ、普段は自由に口を動かせる状態を保ちましょう。また、しつけの際に愛犬の口を強く握る行為も避けるべきです。驚いた犬が反射的に噛みつく危険もあります。

③ 留守番のトレーニングを怠ること

留守番が苦手な犬は、飼い主さんと離れることで強い不安を感じ、「分離不安症」になることがあります。これを防ぐためにも、留守番のトレーニングは非常に重要です。最初は短時間から始めて徐々に時間を延ばし、安心して過ごせるようにお気に入りのおもちゃや寝床を用意しましょう。留守番が上手にできたときには、必ず褒めて安心感を与えてください。

しつけは「愛犬を支配すること」ではなく、「お互いに信頼して快適に暮らすためのコミュニケーション」です。優しさと根気を持って、愛犬の気持ちを尊重しながら進めていきましょう。

🐶 大切なのは「できたら褒めてあげる」こと

愛犬のしつけで一番大切なのは、「叱ること」ではなく「褒めること」です。ついできないことに目が向き、叱ってしまいがちですが、犬は人間の言葉を完全に理解できません。怒られても「なぜ叱られたのか」がわからず、混乱や不安を感じてしまいます。結果として、飼い主さんとの信頼関係が弱まり、しつけがうまくいかなくなることもあります。

逆に、できたときにすぐ褒めてあげると、犬は「これをすると褒められる!」と学び、良い行動を自発的に繰り返すようになります。アイコンタクトや「おすわり」「まて」「トイレ」などの基本的なしつけができたときは、笑顔で「いい子だね!」と声をかけたり、軽く撫でてあげたり、おやつを与えたりして喜びを共有しましょう。

しつけは犬にとって“我慢”の時間ではなく、“楽しいコミュニケーション”の時間にすることが理想です。犬が「もっと飼い主さんと一緒にいたい」「指示に従うと嬉しい」と感じるようになると、しつけは自然とスムーズに進みます。

焦らず、褒めながら、一歩ずつ。
日々のしつけの積み重ねが、愛犬との信頼関係をより深く、そして豊かなものにしてくれるでしょう。


🐾 まとめ

しつけは「信頼と絆を深める時間」

犬のしつけは、単に「言うことを聞かせる」ためのものではなく、飼い主と愛犬が安心して共に暮らすための大切なコミュニケーションです。
「こうしてほしい」という飼い主の気持ちを、犬に伝わる形で教えてあげることで、日常のトラブルを減らし、お互いが快適に過ごせるようになります。

ただし、すべての犬に同じ方法が通じるわけではありません。性格や性質によって向き不向きがあるため、うまくいかないときは焦らず方法を見直すことが大切です。場合によっては、しつけ教室やドッグトレーナーの力を借りるのも良い選択です。

愛犬のペースを尊重しながら、褒めて伸ばす姿勢を忘れずに。
毎日のしつけは、愛犬との絆を深め、かけがえのない信頼関係を築く時間でもあります。
「できたね」「えらいね」と笑顔で声をかけるその瞬間こそ、愛犬にとって最高のご褒美なのです。